池の斎串を裸の男が奪い合う矢取神事
どんな伝承か
京都の賀茂御祖神社(下鴨神社)では、八月の立秋の前夜に矢取神事が行われる。神職が祓えをして人形を池に投げ入れると、たちまち数十人の裸の男たちが池に飛び込み、池に立ててある斎串を奪い合う。斎串とは神の意志が現れる棒のことで、この神聖な棒には強い呪力があり、手にした者に福徳を授けると信じられてきた。著者は、その信仰がこうした勇ましい行事を生んだと説き、御幣が本来は神の依り代となる樹枝であったことを示す例として挙げている。
原典より
この神聖な棒はいみじき呪力があり、それをもつ者に福徳を授けるとの信仰がこのような勇壮な行事を生んだのである。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。