三尸の縁起を持ち回る庚申の講中
どんな伝承か
庚申の夜に眠ってはならない理由を三尸の虫に求める説明は、村々にも生きていた。南会津の田島町高野では、人の体には三尸という虫がおり、庚申の夜に眠るとその虫が天へ上って当人の悪事を訴え出る、だからこの夜は精進潔斎して寝ないのだ、という趣旨を記した紙が伝わっていた。これを庚申の縁起を書いたものとして、講の間で持ち回りにしていたという。秋月観暎の調査による例で、村の人びとが三尸の説をまるで知らなかったと考えるのは誤りだと示すものである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。