宇治橋で追いついた閻魔王の使い
どんな伝承か
楢磐島は奈良の左京六条五坊の人で、大安寺の西の里に住んでいた。聖武天皇の代、大安寺の修多羅分の銭三十貫を借りて越前の都魯鹿の津へ商いに行き、品を船で運ぶ途中に急に病んだ。一人で馬を借りて帰る道で、近江の高島郡磯鹿の辛前に来ると、三人の者が一町ほど後をついて来る。山代の宇治橋で追いつかれて問うと、閻魔王から磐島を召しに遣わされた使いの鬼だという。干飯を与えて家でのもてなしを約し、斑の牛を差し出して助けを乞うと、鬼は同じ戊寅の年生まれの率川社の占い師を身代わりにすると言い、自分たち三人の名を呼んで金剛般若経百巻を読めと頼んで、夜半に去った。
原典より
鬼言、我今汝物多得食,其恩率故、今免汝者我入重罪,持鐵杖應所打百段、若有與汝同年之人耶。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。