増上寺の若僧に憑いた花崎狐
どんな伝承か
増上寺の寮に住む若い僧に狐が憑いた。狐は主僧に向かい、隣の屋敷の庭にあった小さな祠に住んでいたが、寮主に取り壊されて行き場を失ったと訴え、この庭に形ばかりの祠を建ててほしいと願った。素性を問われると、洛西久世の生まれで、数百年前にこの地へ来た花崎という者だと答える。額に掛ける名を自分で書けと言われ、手本があれば書くと応じたので、花崎社の三字を示すと、寮主よりはるかに達者な字で写してみせた。さらに朔日と十五日に一膳の飯を供えてほしい、自分は食わぬが眷属に施すのだと頼んだ。祠は建てられ、狐の書いた額は今も残ると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。