常世の国から戻った筒川の島子
どんな伝承か
『丹後風土記』によれば、与謝郡日置の里の筒川村に、日下部首らの祖とされる島子という容姿の美しい雅な男がいた。雄略天皇の御世、島子が小舟で三日三晩釣りをしても魚は一匹も掛からず、五色の亀を得て船に置いたまま眠ると、亀はたちまち美女に変わっていた。天上の家の者と名乗る乙女に求められて夫婦の約束をし、目を閉じている間に海中の大きな島、つまり不老不死の常世の国へ渡った。三年たって郷里が恋しくなり、開けてはならないと言われた玉匣をもらって帰ると、実は三百年が過ぎて知る人は誰もいない。思わず匣を開けると、乙女のかぐわしい姿は雲とともに天へ去り、島子は涙ながらに乙女と歌を交わしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。