元興寺の鐘つき堂で鬼の髪を剥いだ童子
どんな伝承か
敏達天皇のころ、尾張国の農夫が田で雨宿りをしていると、雷鳴とともに子供のような雷神が目の前に落ちてきた。鋤で突き殺そうとすると雷神は命乞いをし、強い子を授けるかわりに楠の船に水を満たして竹の葉を浮かべてほしいと頼み、そのとおりにすると霧と稲妻に乗って天へ昇った。やがて生まれた男の子は頭に大蛇が巻き付いており、力が強く、のちに元興寺の童子となった。そのころ寺では鐘つき堂の小坊主が夜ごと何者かに食われていた。童子は四隅に灯を置いて待ち受け、夜明け前に現れた大鬼の髪をつかんで放さず、鬼は自分で頭の皮を剥いで逃げた。血の跡は罪を犯して殺された寺の奴僕の墓で消え、童子はのちに道場法師となったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。