元興寺の鐘堂で童子を殺した霊鬼
どんな伝承か
『日本霊異記』には、奈良の元興寺で、悪い下男の霊が鬼となり、鐘堂で鐘を撞く童子を毎晩殺したという話が載る。のちに道場法師と呼ばれる大力の童子がこの鬼を退治し、そのとき流れた血をたどっていくと、下男を埋めた十字路まで続いていたという。ここでは怨霊が鬼に化けて人を取り殺すと信じられており、それを退けたのが山伏の原型とされる道場法師であった。山伏は鬼そのものではなく、死霊の祟りを退け、悪霊を鎮める呪力を持つ者と考えられていたことがうかがえる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。