佐渡に来た粛慎人と椎の実の小人
どんな伝承か
欽明帝五年(五四四)十二月、越の国から次のような報告があった。佐渡島の北、御名部の碕岸に、粛慎人を乗せた船が一艘漂着したという。乗員たちは年中魚ばかり食べて漁に明け暮れていたため、島の人々はこれを鬼魅ではないかと恐れた。また、島の東の禹武邑では、村人が拾った椎の実を灰の中で炊いたところ、皮が爆ぜて二人の人間の姿となり、飛び上がって互いに闘い出した。庭に捨てても闘いはやまず、巫女に神意を問うと「鬼魅のために里人が苦しめられるであろう」との予言があった。果たして略奪が始まり村人は苦しめられたが、瀬波河浦の水を飲んだために神罰が当たり、粛慎人はやがて全滅してしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。