酒臭くなって戻った岩田の万蔵
どんな伝承か
紀州西牟婁郡の岩田の万蔵は、神隠しにあって三日目に宮の山の笹原で寝ているところを見つかったが、その時ひどく酒臭かった。本人の話では、神に連れられて摂津の西宮へ行き、盆の十三日の夜、大勢が集まって酒を飲む席に自分も加わって飲んでいたのだという。宇井可道の「璞屋随筆」に記された話で、随筆の時点から六十年ほど前の出来事だとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。