百日は軒を離れない霊魂
どんな伝承か
陸中の和賀郡では、人の霊魂は死後百か日を過ぎるまでその家の軒を離れないといわれ、遺族はその間おそれつつしんで精進を続けた。葬るときに棺の中からガタと音が鳴ることがあり、身内にはそれで霊がまだ生きているのだと分かったという。また臨終のころには、魂が来たといって戸の開く音や、すたすたと歩く足音を耳にすることがあった。流し場でがたがた鳴れば女、玄関から入って奥へ進む音がすれば男、といった具合に聞き分け、その訪れは死亡の日時とよく符合すると信じられていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。