オーサキが来たと叫んだ小幡町の女
どんな伝承か
上州のオサキ持ちは、当人自身に仇をするというより、その者によって周囲の家が憑けられるから恐ろしいとされた。上毛民俗学会の今井善一郎らが群馬県下の各町村に発したアンケートの報告では、多くの地方が二、三十年あるいは四、五十年も前になくなったと答えているが、なお「オサキ屋がある」「大字ごとに少しずつある」という回答も散見する。憑けられたとして騒ぎ立てた事件は、近くは昭和二十一年の夏、甘楽郡小幡町であった。竹籠つくりをしている者の妻、明治三十三年生まれが突然発狂してたけり狂い、やむなく屋内に丸太をもって監禁し、富岡厚生病院の診療を求め、約半年を経て平常に戻ったが、その間「オーサキが来た」と叫び狂ったという。
原典より
竹籠つくりをしている者の妻、明治三十三年生まれが、突然発狂し、たけり狂い、やむなく屋内に丸太をもって監禁、富岡厚生病院の診療を求め、百方手を尽くした後、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。