菖蒲湯で蛇を退けた女神
どんな伝承か
五月五日に菖蒲を使う由来を語る話が、藤沢市の遠藤に伝わっている。昔、御先祖にあたる女神が湯に入ろうとすると、いつも何かに悩まされて入ることができなかった。身重になったある日、入ったほうがよいと言われて菖蒲湯につかったところ、屋根の上で蛇が話し合う声が聞こえてきた。今日はやけに早いではないかと問われた蛇が、菖蒲湯に入っていたので寄りつけなかったと答えたという。横浜市十日市場町のほうでは、蛇の化身に見込まれた娘が菖蒲湯のおかげで蛇の子を産まずにすむ筋になっており、いずれも三輪山の伝説につながる蛇聟入の型とされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄による講述「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げ、藤沢・津久井・平塚などの昔話や笑話、世間話を紹介する。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなり、昔話は本格昔話・派生昔話・笑話の別に沿って類話を並べる。