正三さんの父の狐落し
どんな伝承か
福岡県糟屋郡篠栗町の狐憑き実話。明治の末ごろ、正三の父に急に狐が憑いた。両手を招き猫のように曲げて顔にかざし、犬のように這って座り、皿に口をつけてぴちゃぴちゃ食べ、固い物は狐のように横噛みした。ある日、家では行者を呼んで狐落しの呪術が行われた。白衣の行者は本人を荒縄で縛り、経を唱え御幣を振り、錫杖で打っては「出るか」と迫り、真っ赤に焼けた火箸をちらつかせた。すると父は涙をこぼしながら「油揚げを五枚、村の出口の四辻に置いてくれ」と言って昏睡し、以後は回復したが、半年ばかり後に一家はどこかへ引っ越したという。
原典より
行者は「よし、そのとおりにしてやるから出て行け、二度と再び憑いたら、今度はもっとひどいぞ」と睨みつけました。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。