浪速から松浦へ辿り着いた吉実
どんな伝承か
江戸で身替りが見つからず不機嫌になった吉実は、酒に酔って相手の遊妓に止々井ノ沼の贄のことを話してしまった。遊妓はしばらく考え込み、そういう容姿の女に浪速で会ったことがあると言った。藁をもつかみたい吉実は夜のうちに江戸を発ち、東海道を急いで浪速に着いたが、その女は一ヵ月前まで住んでいたものの、今は郷里の九州松浦へ帰って居ないという。一行はさらに山陽道を急ぎ、慣れない船路に難渋して九州に渡った。松浦のその家は留守で、あたりをうろうろしていると、雑木林の陰で去年の秋の稲穂を拾う母娘に出会った。ぼろをまとったその娘こそ、はるばる陸奥から訪ねて来た松浦の小夜姫であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。