犬神が乳児を食ったと絶交
どんな伝承か
昭和二十六年十二月、松江法務局に受理された島根県邑智郡矢上町の安部梅夫の訴えによる名誉侵害事件。小作人三田吉松の次男良雄が同年一月に病死した際、安部の飼う犬神が食い殺したとの風評が立った。これにより安部の親戚が交際を絶ち、娘の縁談も破談となり、土建業の使用人も逃げ出す事態となった。調査の結果、三田が安部への悪感情から祈禱師妙光の口を借りて言いふらしたことが判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
つきもの持ち迷信の歴史的考察――狐持ちの家に生れて(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1953年(昭和28年))
『つきもの持ち迷信の歴史的考察――狐持ちの家に生れて』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、柏林書房から刊行した憑きもの筋の研究書である。島根の狐持ちの家に生まれた著者が自らの体験を語り、破談や絶交など迷信が今も残す実例、蛇持ち・犬神・外道・とうびょうなど十一種の類別、人狐物語や松江藩の御触書、隠岐の訴状などの文献を取りあげる。後半では近世中期以後の新興地主と村八分から迷信の発生を説き、柳田國男と恒松安夫の序を付す。