貧乏神の絵を祀って富んだ旗本と小石川の牛天神
どんな伝承か
江戸の随筆『耳袋』には、小石川の北野神社の中にまつられた牛天神をめぐる話が書かれている。この社の近くに住んでいた貧しい旗本の一人が、貧乏神の姿を絵に描いてこしらえ、朝に夕にその絵に向かって窮状を訴え続けた。するとしだいに懐具合がよくなっていったので、旗本は小さな祠をこしらえ、北野神社の片隅に置かせてもらった。これがもとになって、この社には暮らしに困った人々がこぞってお参りに押しかけるようになったという。
原典より
この社の近くに住む貧乏旗本の一人が、貧乏神の画像をこしらえて、朝夕訴えたところ、だんだんに金まわりがよくなった。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、暮らしの奥に秘められた信仰や伝承を扱った全集『日本人物語』の一巻である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使いと犬神落とし、生霊、隠れキリシタンや隠し念仏などを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。