二股の道で行き逢った米屋の娘
どんな伝承か
文化七年七月二十二日のこと、田安御屋形の馬丁の一人が寒霍乱で急死した。医師も見放したが、薬を無理に飲ませて部屋の隅に寝かせておくと、数時間後に息を吹き返した。本人によれば、広い原へ出ると道が二股に分かれ、登り坂を行こうとして本郷の米屋の娘に行き逢った。共に行こうと誘ったが娘は下り坂へ。登り坂の先で赤い衣の僧に会い、故郷の両親に一目会いたいと望むと、帰してやろうと言われて蘇生したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。