殷富門と武徳殿の間に灯る百余りの鬼火
どんな伝承か
『古今著聞集』に、延長八年七月、下野長用が殷富門と武徳殿のあいだで鬼神に出会った話がある。そこには百あまりの火をともしたものが見え、かなり長いあいだ現れていたが、やがて消えていったという。著者は、江戸の絵に閉じこめられた妖怪よりも、このように百余りの鬼火が淡々と静かに消えていくさまを語るほうが、はるかに怖ろしいと述べている。
原典より
火百あまりばかりともしたる物みえけり。やっひさしくありてぞきえける—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。