遠山奇談の池口山キジン
どんな伝承か
遠江の木地屋については、「諸国採薬記」に深山に木地挽きという者がいて板へぎなどで渡世する者が多いとある記事と、もう一つ「遠山奇談」の記事しか知られていない。後者は寛政十年に本願寺再建の用材を求めて信州遠山の地方まで分け入った真宗の僧の紀行で、池口山の奥で、この先にキジンの家があると聞いて僧は仰天した。ところがそれはこの辺りの方言で、実は木地挽きの藤右衛門という者が住んでいたのだという話である。柳田はこの二つの記事を東海道方面の数少ない材料として挙げている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。