地獄穴へ妻を追った副酋長
どんな伝承か
妻を亡くして泣き暮らしていた村しもての副酋長が、久しぶりに浜へ出ると、死んだはずの妻が岩礁で海苔を採っていた。名を呼びながら駆け寄ると、妻は振り向きもせず逃げ、近くの地獄穴へ入ってしまった。入ることを禁じられているのも忘れて後を追うと、穴の中は暗く、やがて薄明るくなって死人の村へ出た。海辺では大勢が舟から荷を上げていたが、その中に妻の姿は紛れて見分けがつかない。犬に吠えられて逃げ帰ると、体にウラズカの干したものが幾つも下がっており、捨てても付いてくるので持ち帰って煮て食べた。まもなく病み、迎えが来たと言い残して死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。