姫神山を追い出した岩手山
どんな伝承か
岩手山は昔この地方の主で、姫神山はその妻であった。姫神の容貌が美しくないのを嫌った岩手山は、俺の目の届かぬ所へ行けと言って追い出し、送り役のオクリセンには、しくじれば首はないものと思えと厳命した。ところが翌朝東を見ると、姫神山は悠然と眼前にそびえている。怒った岩手山は口から火を噴き、谷は鳴り渡り山は震いどよめいた。岩手山と姫神山の間にある送瀬山の頭が欠けているのは、その時に首を落とされたためで、岩手山の右裾に見える瘤がその首だという。近くの五百森は姫が形見に持った巻子を散らしたもの、赤い小石の多い赤川は姫が流したお歯黒の跡だと伝える。
原典より
<高木 「岩手山」 柳田―「山の丈競べ」>岩手山は、昔この地方の主宰者であった。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。