エトロフに凍った雌岳の涙
どんな伝承か
石狩岳、いまの大雪山とマツネシリは夫婦の山だったが、些細なことから大喧嘩となり、雌岳は二人のあいだの乳呑児を抱いて遠く釧路へ去った。怒った石狩岳の投げた槍は雌岳を外れて子の耳を傷つけ、逆上した雌岳が拾って投げ返すと、音更にあるヌプカウシヌプリが走り出て槍を打ち落とし、石狩岳を救った。この山が立っていた跡がへこんで湖になったので、然別湖の深さと山の高さは同じだという。釧路へ去った雌岳はさらに千島のエトロフへ逃れてアトサヌプリとなり、夫と子を思って泣き続け、その涙が凍って夏も解けない氷になったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。