天の鳥舟で来た越後開拓の神
どんな伝承か
天香語山命は高志の国の開発を命じられ、足の速い天の鳥舟に乗って沖合までやって来た。目印の高い山へ舳先を向けたが、麓の海岸はほとんど絶壁で舟を寄せられず、ただ一か所の小さな湾に着いたという。当時この一帯では、間瀬の安麻背という男が大勢の手下を従え、沖を通る舟を襲い、浦人を苦しめていた。命は米で造った酒をたらふく飲ませて安麻背を岩穴に閉じ込め、六人の王子とともに岩洞に住み、手繰り漁法を教えたのでテグリヒコノミコトと敬われた。原野を拓いて米や野菜を作らせ、塩焼き・機織り・酒造りも広め、二百年余ののち兎の案内で十宝山の頂に立って、沼地の蒲原平野を開いたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。