孫の汲む水に報いた錫杖の井戸
どんな伝承か
出羽国の水晶山の麓、猪野沢の越倉というところに貧しい百姓が住んでいた。家には祖母と男女二人の孫がいる。あるとき一人のみすぼらしい旅僧が訪れ、祖母は貧しくて満足なもてなしもできないと言いながら米を差し出した。僧は礼を述べて水を一杯乞うたが、あいにく水がない。井戸は崖の下にあり、幼い孫たちが毎日汲みに通っていると祖母は語り、二人にまた汲みに行かせた。僧はその水を飲み、不自由さを知って、持っていた錫杖で庭の一隅を突く。すると水がこんこんと湧き、立派な井戸になった。この僧こそ弘法大師であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。