大石の里に生まれた八百比丘尼
どんな伝承か
昔、大石の里に八百比丘尼という者がいた。幼いころ、家で数人が酒を飲んだ中に見知らぬ者が一人おり、自分の家でも席を設けるから某日某所へ来てほしい、迎えに行くと言って別れた。当日、迎えの男は皆に目を閉じさせて連れて行き、目を開けると立派な屋敷であった。宴の帰りに男が珍しい肴を出したので、皆は怪しんで海へ投げ捨てたが、女の父だけが泥酔して気づかず持ち帰り、娘がひそかに食べた。それは人魚であった。娘は数百歳になっても衰えず、尼となって若狭に移る。のち大石の里へ戻り、粛慎隈の大石の下を掘らせて巨人の骸骨を示した。再び若狭へ行き、国守に二百歳を譲って八百歳で歿し、八百姫明神として祀られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。