安寿塚と盲いた母の悲話
どんな伝承か
海府線の鹿野浦トンネルを抜けた先、海側の田の中に小さな祠が立ち、土地では安寿塚と呼ぶ。奥州の太守だった岩城判官正氏が讒言によって筑紫へ流されると、子の安寿姫と厨子王丸は母を伴って父を追ったが、越後の直江津で人買いの船に売られた。母は佐渡二郎の手に渡って鹿野浦へ置かれ、虐げられるうちに目が見えなくなり、安寿を恋う唄をうたって鳥を追ったという。長じて太守となった厨子王丸は姉と佐渡へ迎えに来るが、悪童に騙され続けた母は現れた娘を信じず、杖で打って殺してしまった。母は骸を中の川の上流へ葬り、以来この川には毒が流れると伝わる。のち達者の清水で目を洗うと視力が戻ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。