一本松に迫った千匹狼と銀色狼
どんな伝承か
昔、三浜峠に一本松という松の大木があり、そのあたりに千匹狼が住んでいた。三浜をめざす薬売りが山中で日が暮れて迷い、狼に取り囲まれて一本松に登った。狼は梯子のように重なって追い、あと少しというところで「九百九十九匹、だれか一人足らんぞお」と言い、トウネンドウ(庄屋)のお方を呼びに行った。やがて銀色狼が来て足に噛みつこうとしたので脇差で切りつけると、左肩から血を噴いて転げ落ち、他の狼も崩れて消えた。夜明けに三浜へ入るとトウネンドウの屋敷前に人だかりがあり、お方が病で伏せているという。招かれて見ると左肩が割れており、薬屋が声を上げるとつむじ風が起こってお方は銀色狼に変じて山へ隠れ、本当のお方が山から逃げ帰った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。