海底の鳥居を潜った婆と開けた桐の箱
どんな伝承か
昔、安乗村の瓦屋の婆が海に入ったまま出て来ず、行方が知れないので七日目に葬儀供養をした。しばらくして大グラ島へ小むつを釣りに行った者が、海中から「ホーイ」という声を聞くと、浮いてきたのは海女の磯桶で、続いて助けを求める声がした。連れ帰ると婆は小さい桐の箱を持っており、大グラ島から四十間ほど海の底の石の鳥居をくぐって磯部のイソコ大神へ行き、中を開けなければ家は繁昌するが開ければ七代の間盲目が生まれて家に祟ると戒められて授かったと語った。庄屋が皆の止めるのも聞かず蓋を取ると、八畳いっぱいの萌黄の蚊帳が出て元に戻らず、箱ごとイソコ大神へ納めた。以来瓦屋は代々片目の者が生まれるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。