宿を貸さず衰えた藤田千軒と蚊入らずの林
どんな伝承か
蚊入らずの林は大字村野の字藤田にあり、一畝ばかりの小丘をなしている。今も触れると祟るというので、雑草のまま放置されている。古道図には「安倍清明林、夏蚊もすまず」とあり、昔、安倍晴明がこの地に蚊を封じ込めておいたので、今に至るまでここだけ蚊がいないと言われている。村人は、弘法大師がこの里に来て一夜の宿を乞うたとき、どの家も泊めなかったので、大師はやむなくこの場で野宿し、以来ここには蚊がいないのだとも語る。なお村野村の藤田は藤田千軒と称され、かつては千戸の大村であったが、宿を貸さなかったため空海が今に五軒になるだろうと予言して去り、のちに五、六戸の小村落に衰えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。