鶴が恩返しに嫁いだ別子山
どんな伝承か
推古天皇の御世、大字岡の別子山の麓に鈴見という孝行な男が住んでいた。家は貧しく、病んで寝たきりの母を養いかねていた。ある日、交野へ出稼ぎに行った帰り道、若者たちが足に傷を負った鶴を殺そうとしているのに出会い、その日の賃金を差し出して鶴を買い取り、手当てをして放してやった。十日ほどのち、気品のある女が訪ねてきて母を看病し、母の死後は霊夢の告げによって鈴見と夫婦になり、男児をもうけた。子が五歳になった年、女は子を連れて裏の別子山に登り、自分は鶴と化して降りた天人で、助けられた恩に報いるために来たのだと明かし、鶴の姿に戻って飛び去った。この岡を別子山、また鈴見ヶ岡と呼ぶのはそのためだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。