峠の井戸から生まれた待乳膏薬
どんな伝承か
高野山へ向かう弘法大師が待乳峠にさしかかると、赤子の泣く声が聞こえた。見れば母親の乳房に大きな腫物ができて乳が出ず、母も子も苦しんでいる。大師はそばの木から脂を取って乳房に塗った。すると腫物は消え、乳が出るようになったという。さらに大師は峠の頂に井戸を二つ掘り、その水で樹脂を練って膏薬をこしらえる法を教えた。ひび・あかぎれによく効くとして広く用いられる待乳膏薬は、これがはじまりだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。