賽銭が白蛇に変じた銭掛松
どんな伝承か
西国から伊勢へ参宮しようとした男が、宿を重ねて津の高野尾あたりまで来た。道ばたの茶屋で先の道のりを尋ねると、亭主は丘を越えるのに十日、越えてからさらに十日かかると偽って答えた。路銀の乏しい男は落胆し、そばの松に賽銭を掛けて神宮の方角を伏し拝み、引き返した。亭主が松の枝の銭に手を伸ばすと、銭を通した紐がみるみる白蛇に変わり、鎌首をもたげてにらみつけたという。それから茶屋はさびれ、亭主は土地を離れて流浪の末に狂い死にした。男は翌年ふたたび伊勢を目指し、松に掛けたままの銭を取って参宮の願を果たしたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。