稲藁の大蛇を峠に掛ける習わし
どんな伝承か
柏谷では、いつの頃からか秋の取り入れのあとに稲藁を寄せ集めて綯い、大蛇の形をこしらえて峠の左右の木に注連のごとく結びつけた。人々は飯を炊いて腹いっぱい食べたのち、近くの峰に登って大森谷のほうへ尻をまくり、これを叩きながら大森の者どもこれでも食らえと囃したという。大森の人々はこれを古い例として腹を立てず、子供や女たちは見て笑い楽しんだ。どれほど寒い年でも欠かさず行い、怠れば家に災いがあるとされたが、今この習わしは絶え、峠には大蛇の霊を祀る観音堂が残るだけだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。