面と引き換えに化け方を明かした狐
どんな伝承か
京詣りから戻った人が夕方、江波の藪のへりを通ると、お三が化けていた。こちらが欺してやろうと、京で買ってきた鬼面とお多福面を持ち、まず鬼面を口にくわえて顔を前に向け、次に後ろを向いてお多福面をくわえて前を向いてみせた。お三は負けたと頭を下げ、秘伝を授けてくれと頼む。その人が「前を向けば鬼面、後を向いてまた前を向けばお多福面になる」と言うと、お三は面が欲しくてたまらず、自分の化け方を教えるからと頼んで鬼面をもらい、「死んだ人間の頭の皿を頭に載せれば思うように化けられる」と言って藪へ帰った。ある日、侍が藪のへりを通ると、お三が鬼面をくわえて前後を向いていたので、無礼者といって斬り捨てたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。