嵐を鎮めた和泉式部と西金寺
どんな伝承か
平安中期の歌人和泉式部は、厳島へ参るたびに眺めのよい向東へ立ち寄ったという。長後四年の参詣の折、向東の沖で大嵐に遭い、船は沈みかけた。式部が守りを高く掲げ、嵐を鎮めてくださるなら寺を建てますと祈ると風波は治まり、船は船戸に着いた。そこには金毘羅宮があり、式部は菅原道真が登ったという天神山から松を一本持ってきて宮のかたわらに植えた。この松は上へ伸びず横へ枝を広げ、古江浜の下がり松と呼ばれたが、いまは枯れている。のち古い池に竜が出ると噂が立つと、式部は池へ行って歌を詠み、東北の山頂に竜王神を祀った。以来、竜を見た者はいないという。嵐の礼に建てたのが西金寺で、寺には式部の供養塔が残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。