岩が内に捨てられた鬼若
どんな伝承か
京の二位大納言の娘鶴方姫は、婚儀が決まると同時に病に倒れ、熊野権現に平癒を祈った。翌年、親子で礼参りに向かい、田辺の湛増の屋敷に泊まったが、帰路の山道で一行が襲われ姫だけがさらわれる。湛増との間に生まれた子は胎内に十八か月おり、産声を上げたときには髪が肩まで垂れ歯もそろい、二、三歳ほどの姿だった。鬼神の生まれ変わりと見た湛増は鬼若と名づけて葬ろうとしたが、人々の助命で稲成町の岩が内に捨てられる。折よく熊野へ参る二条大納言が通りかかり、権現の申し子と喜んで京へ連れ帰り育てた。これがのちの武蔵坊弁慶だと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。