阿羅波比神社の祭に帰る池の竜神
どんな伝承か
外中原町に住む松平家の武士夫婦は子に恵まれず、妻が信仰する大山寺の観音に願を掛けた。ほどなく女の子が生まれたが、育つにつれて自分も大山寺へ参りたいと言うようになった。五月のある日、一家で参詣した帰り道、赤松の池のほとりで休んでいると、娘は不意に池へ身を躍らせた。やがて水面の中ほどから、自分は池の主の竜神で元へ帰らねばならぬ、不孝を許してほしい、その代わり氏神の祭礼には年に一度必ず帰る、と声がして、竜の姿が一瞬見えたのち水底へ沈み、雨が降り出した。以後、氏神阿羅波比神社の秋祭りには、この家では入口に大盥の水を据えたが、水は赤土に濁り鱗が二、三枚沈んでいた。竜神が足を洗いに来るのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。