谷田池に身を投じた蛇身の姫
どんな伝承か
昔、松江市矢田町の豪族に美しい姫がいた。姫は物心つくにつれ、なぜか浜田の谷田池を慕い、侍女が部屋をのぞくと蛇体になっていることもあった。十六歳の四月末、姫は池のほとりの祠へ参りたいと言い出し、出雲路から石見路へ数日かけて国分の谷田池に着く。祠で祈ったあと、手を洗うと言って侍女の隙を見て池へ飛び込んだ。姫が蛇の化身であったとも、池に古く住む雄蛇に恋慕されたからともいう。のち谷田家の重昌が山を開くにあたり池畔の鐘撞山に通夜すると、満願の夜、池の大蛇が池を譲る証しに鱗一枚を残して去ったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。