牛が隠した麦と丑の日の刈りかけ
どんな伝承か
千鹿谷では、麦の実る五月の丑の日に一握りの麦を刈ってオカマ様に供え、これを丑の日の刈りかけと呼ぶ。その麦をこうせんにして食べると、暑さ負けもかぜもしないという。昔、弘法大師が中国のある農家に立ち寄ると、麦が山と積まれていた。日本で作れば国が豊かになろうと一握りをつかんだところ、見ていた犬が吠えたてた。大師が困って麦を投げ捨てると牛が出てきてその上に寝ころび、家人には知れずにすんだ。家人は高僧を疑ったことを詫びて犬を殺し、牛が立つと大師は麦の穂を拾って持ち帰れたという。牛への感謝から刈りかけを行い、戌の日の麦蒔きは嫌われる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。