毛の玉を返してもらった加藤狐
どんな伝承か
下谷御徒町にあった加藤家の庭の稲荷には、加藤狐と呼ばれる狐が棲みついていて、人々に恐れられていた。あるとき、この家に出入りしていた鳶の者が、庭で狐が転がしていた宝珠のようなものを拾って持ち帰った。その晩、見知らぬ女が戸を叩き、狐が子を育てるのに欠かせない毛の玉を返してほしいと告げた。言われるまま返してやると、女は礼だと言って大きな鯛を一匹置いていったという。加藤狐は明治二十五年ごろまで姿を見せていたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。