精進へ急ぐ馬方を送る山犬
どんな伝承か
夏でも本栖に着くころには日が落ち、笈の峠まで来ると先の見えないほどの闇になる。馬方は松明を振りながら湖のほとりを精進へ急いだ。ふと馬が首を袖の下へ差し入れてくるので、山犬が後をつけていると悟ったという。もっとも山犬は振り回される火を嫌ったらしい。精進の村が近づいたところで、ご苦労だった、もう家へ帰れ、と声をかけて礼を述べると、山犬はどこかへ去ったと伝わる。土地ではこれを送り狼と呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。