三春へ帰った正法寺の二頭の絵馬
どんな伝承か
春の半ばのこと、坂東十番の正法寺へ一枚の絵馬が納められ、観音堂に掲げられた。福島の三春から届いたもので、描かれていたのは真白な雪毛と栗毛の若駒、二頭であった。その夜から、夜半になると馬の蹄の音が聞こえるようになったが、姿を見た者はいない。翌年の春、二頭はどこへともなく走り去り、絵馬の上の馬も消えてしまった。抜け出した馬は、奉納した主のもとへ帰って行ったのだという。いま掲げられている馬は、三春からあらためて納められたものである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。