小川の水を呑んで田を救った竜
どんな伝承か
長伝寺の本堂の欄間には竜の彫り物が掲げられていた。この竜は夜になると欄間を抜け出し、朝には何事もなかったように元へ戻っている。それが度重なるので、ある夜、住職が様子をうかがっていると、竜は音もなく抜け出して小川のほとりへ行き、水を呑みはじめた。川の水はみるみる減っていく。そのころあたりは雨続きで稲が水に浸かって困っていたが、どうしたわけか与野の田だけは水害を免れた。人々は竜のおかげであろうと感謝したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。