木の葉を船にして渡った大師
どんな伝承か
平安のころ、諸国を歩いていた弘法大師が、谷中の里から足立の地へ渡ろうとした。船頭は着いたばかりの船を杭につないだところで、乞食坊主のために船は出せぬと相手にしなかった。大師は岸を歩きながら川面を見ていたが、やがて木の葉を三枚水に浮かべて呪文を唱えると、葉はたちまち船になった。大師はそれに乗って向こう岸へ渡ってしまう。次に土地の豪族が渡しを頼むと船頭はすぐ案内したが、綱を解いても船は動かない。叱られて慌てた船頭は、先の僧が弘法大師だったと後に知り、前非を悔いて彼方を伏し拝んだ。翌朝、船は動くようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。