乙女に鎌を奪われた阿久和の鎌取池
どんな伝承か
阿久和川をさかのぼった川上に鎌取池という池があった。明治の中ごろまでは南北に長い広い池で、阿久和と二俣川の境にあたっていた。水は青々と満ち、まわりは樹木が茂って昼でも梟が鳴くほど寂しい場所だったという。池の主は三十メートルもあろうかという大蛇であった。ある日、草刈りに出ていた住民の前、松の木のもとに目のさめるような美しい乙女が現れ、やがて池の向こうへ消えた。我に返ると手にしていた鎌はなく、池のどこかで水を飲む大きな音が響いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。