鷲に赤子をさらわれた子取り池
どんな伝承か
春日井市となった旧東春日井郡篠木村の下原に、子取り池という池がある。今からおよそ四百五十年前、近くの大草城の城主に西尾道永という人がいた。心が冷たく領民をいたわることをせず、百姓がよく働いているか毎日領地を見回るのを日課にしていた。あるとき、生まれたばかりの赤ん坊を籠に入れて池のそばに置き、脇目もふらず田植えに励む百姓夫婦がいた。そこを通りかかった道永が横目に見て過ぎようとしたとき、空から大鷲が舞い降りて籠の赤ん坊をさらっていった。道永はそれを見ていたが、声を上げれば近くの百姓たちが手を休めると考え、わざと黙って立ち去った。それ以来、この池を子取り池と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。