夢の網にかかった高蔵寺の子福観音
どんな伝承か
春日井市の高蔵寺に祀られる観音の由来である。七百五十年ほど前、玉野川のほとりに小比企という漁師が住み、子のないことを嘆いて高蔵山の頂の毘沙門天に子授けを祈っていた。ある夜、堂にこもって祈るうちに眠り、夢の中で玉野川に網を打つと川面が五色に輝いて馬頭観音の像が網にかかった。目覚めると膝元に本当にその像があり、家に持ち帰って手厚く供養するうちに男の子が生まれた。礼に堂を建てて像を安置したところ、子を授ける子福観音として評判になり、今も参詣者が絶えない。境内の子安井戸をのぞくと安産できるといわれ、六月一日の祭には大勢の人が集まる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。