猿の松明の夢と密蔵院の開創
どんな伝承か
慈妙上人は常陸の神田に生まれ、十八で仏門に入って天台の名僧となった。二十九のとき伊勢神宮に千日籠って布教の地を問うと、美濃と尾張に縁があり、着く前に必ず不思議が起こると告げられた。一方、篠木の里の村人は嘉暦三年十月十八日の夜、高僧を修学僧が囲み、松明を掲げた無数の猿が里へやって来る同じ夢を見た。火事の前兆かと案じたが、円福寺の住職は高僧が来る知らせだと言う。その年の十一月十五日、上人は白牛に乗り学僧を連れて現れた。牛は歩みを止めると姿を消し、数本の毛が残った所を牛毛、通った道を牛附と呼ぶ。上人がここに建てたのが密蔵院で、属寺七百を数え秀吉や尾張藩主の保護を受けた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。