縁談のときに通れない一本松峠
どんな伝承か
美濃と三河の境にある西加茂郡小原村は深い山あいの村で、なかでも一本松峠は険しい坂道である。いつのころからか、嫁取りや婿取りなど縁談の話があるときには、この峠を通らない習わしになった。ここを通って縁談をまとめると、どちらかが必ず若死にするといわれるからである。一本松という名を嫌ってのことだろうと考えられている。三河の名高い歌人である磯丸はこの話を聞き、荒ぶる神の行き通う道であっても祟りはあるまいと思う、という趣旨の歌を八十八歳のときに詠んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。