墓の松から生まれた疳の蟲
どんな伝承か
宝飯郡一宮村の大字大木にある進雄神社の鐘が、ある夜盗まれた。同じ集落の寅蔵が、鐘は今、本野ヶ原で二つに割られようとしていると言い出した。行ってみると言葉どおりだった。生まれつき疳の病に苦しんでいた寅蔵は、畑で発作を起こして喜代松に送られる途中、死んだら墓のそばに松を二本植えてほしい、疳の蟲になって同じ病の人を救いたいと言い残し、文久三年三月二十九日に世を去った。約束を忘れた喜代松は急な病にかかり、易者に死者との約束を果たしていないせいだと言われて松を植えると、たちまち治った。やがて松の根元から小さな虫が這い出し、疳の子に飲ませると治ったので、疳の蟲と呼ぶようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。